気づけば夜遅く、綱吉は、どこか知らない家のソファに横たわっていた。
大丈夫か?と聞かれて、声のする方を向く。知らない男だった。
「俺は山本。お前は?」
バジルです。とっさに綱吉と出そうになったがこらえてそう名乗った。
お前、雲雀と会ったんだろ?玄関前で気を失ってたからさ、連れてきちまった。
そういう山本と名乗る男は、雲雀の隣の住人だといった。
「あいつに何か用があったのか? 最近あいつ荒れてんだ。前は、別人みたいにおとなしかったのに、いつの間にか、ああなってた。 昔みたいだ。お前、何か知ってんのか?」
綱吉は、知らないと嘘をついた。巻き込みたくなかったからだ。そして、簡単にこちらの事情を話した。そうなのか。
あいつ、ちょっとは人間らしくなったんだな。え、と問い返せば、山本は彼の過去を話してくれた。とはいっても少しだけしか知んねーけどな、俺、雲雀と同期なんだよ。
バジルは、今の雲雀のこと知ってるみてーだが、昔のことは知らないだろ? 雲雀は根っからの不良で、群れが嫌いで、肉食動物のようだった。いつも一人でいた。 すげーと思ったよ。あいつは孤高の存在であって、だけどどこか、無理をしているようにも見えた。俺に言わせればな。あ、これ秘密だぞ。 あいつは群れを嫌いで孤独を好んでいたが、どこかで相手を探してたんじゃねーかな。それがその少年だと思うんだよ。あいつは待っていたんだ。 いつか、雲雀の相手ができる誰かを、雲雀のそばに居てもいいと思える誰かを、まっていたんだ。だから雲雀は、人に暴力をふるうその手で人を救っていた。 待っていたんだろうな。来るとわかっていたんだ。そこに。
雲雀が医者になっても群れを嫌うのはやめなかった。 ずっと変わらなかったのに、ここ一年くらいの間、あいつは変わったんだよ。相変わらず群れは嫌いだったが、咬み殺さなくなった。 あ、咬み殺すって雲雀の口癖な。意味わかんねーけど。
ま、だからな、あいつは矛盾してんだ。雲雀は矛盾した男なんだよ。
山本という男は、そう雲雀を語った。 綱吉よりも知っているのだろう雲雀の人物像は、綱吉の考える雲雀とは違い、暴力的で、だけどひどく人間らしいとさえ思った。雲雀らしいと言えばらしい。 でもそんな姿は見たことがなかった。
彼を丸くさせたのは、オレなのか。当事者でもない山本だからこそいえるのだろうと、綱吉は思った。 そして、雲雀にも、見てくれる人がいるんだと嬉しくなった。
綱吉はその日、一日彼の部屋に泊まった。山本と雲雀の事から、どうでもいいことまで、何でも話した。 死ぬ前に彼と出会っていたら。どんなに仲良くなれたんだろう。何年も同じ時を一緒に過ごしたような、親友になれたような不思議な気持ちだった。 彼の部屋を出るとき、ふと思って泣きそうになった。
もう会えないのだろう。また来いよな。そう言われた時には、綱吉は震えながらも頷くことしかできなかった。 オレとして、あえるだろうか。だけど、時は待ってはくれない。
あと、1日だ。1日しかない。








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