綱吉は、自分の葬式に出くわした。病院の人間と、数人の友人、俺とかかわりのあった人たち。家族はいない。そして、雲雀が来ることはなかった。 写真の中の自分の笑った顔をみた。病院で撮った写真だ。彼と出会い、自分が生きる気力を取り戻したときのものだ。幸せそうだ。とても。
彼が来ない。どうしてしまったんだろう。
どうしようもなく、雲雀に会いたい、と思った。

綱吉は雲雀に会おうとする。彼がどうしているのかが気になった。彼は大丈夫だろうか。
自分がいなくなって、彼はどうしているのだろう。彼が元気でいることを望んでいるはずなのに、元気であるということに落ち込みそうになる自分がいた。 彼は、オレの事を忘れてしまうのだろうか。簡単に。
綱吉の体の主は、バジルといった。 何をしていたかは知らないが、病院の近くに住んでいる小柄な男で、年は綱吉と同じか、すこし上くらいだった。
まず、どうやって彼に近づこうということになった。小柄なこの男の姿で、いきなり会いに行くのはおかしい。 接点が全くないのだから。どういうふうにすれば、彼ともう一度話をすればできるだろうか。
思いついたのは保険会社だった。そういえば、自分は死ぬ前に保険に入った。あの保険金はどこに行くのだろう。 オレが遺言を書いて、彼に渡せば、彼にすべてが渡る筈だ。
彼は、外国に行こうとしていた。綱吉に隠そうとはしていたが、綱吉は知っていた。彼が、こんなところにいていい筈がないことを。 だから、保険会社になりすました。バジルという男は、綱吉の知り合いの保険会社の男だ。自分自身にそういいきかして、綱吉は雲雀を訪ねることにした。
まずは、病院だ。彼の様子を聞かなければ。

病院につき雲雀の居場所を尋ねてみると、今はお休みを貰っているのだと看護師が言った。
雲雀先生は少し休息が必要なのです。休めば元の彼に戻ってくれることでしょう。
綱吉は疑問に思った。何か起こったのかと聞くと、看護師は渋ったがやがて、声を落として綱吉に教えてくれた。 雲雀先生が主治医を担当していた少年が、数日前に外出を許された日に交通事故で無くなってしまったのです。 雲雀先生は彼のオペをすることができませんでした。それどころか、もう手術はできないと、おっしゃったのです。 彼は、もう命を救うことはできないのだと。
オレのことだ。と綱吉は思った。どうしてしまったのだろう。悲しい。あの、雲雀だ。 強くて、オレに優しくしてくれた、厳しくしてくれた、雲雀だ。あの人が、白衣を着て、オレを見舞う姿が好きだった。 それはもう見られないのだろうか。オレの、オレのせいで。
オレがあの日外出しなければ。オレが外に行きたいと思わなければ。 あの日、病院で、雲雀を待っていればこんなことにはならなかった。彼が人を救うことをやめることはなかった。
綱吉は、看護師に聞いた。 彼は今どこにいるのかと。看護師は、教えられません。と言ったが、綱吉のあまりの必死さに、絆されてくれたのか、やがて彼の住所を教えてくれた。
私が教えたことは内密に。綱吉はうなずいた。その看護師の名は、ハルといった。






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