とある店から、綱吉は病院に帰る途中だった。 とある店とは、目が見えているとき、よくいっていた喫茶店だ。 綱吉は常連で、たまに手伝いすらしていた。毎回飲む、エスプレッソコーヒー。 リボーンという店主にお前にはまだ早いといわれながらも、大人になった気分でいつも飲んでいた。雲雀の姿もその店で見たこともある。
綱吉は壁を伝い、ゆっくりと歩いていた。こんな風に歩けるようになったのも、雲雀のおかげだ。見えないけれど、大概の事は自分で出来る。 人通りの少ない交差点をいくつか抜け、病院までは数百メートルの一本道だった。
そして、ことは起こった。一瞬だった。
綱吉は大きなトラックにはねられ、体は地面へと叩きつけられた。トラックの運転手は、飲酒運転だった。感覚がマヒする。 雲雀から借りたハーモニカが、綱吉からはなれて地面に落ちた金属の音がする。
オレは、死ぬ。怖くない。…いや、怖いのだ。
前までは、怖くなんてなかった。彼と出会うまでは。あぁ、彼は悲しむだろうか。泣いてくれるだろうか。最後に、聞かせてあげたかった。 オレの、ハーモニカの音色を。
綱吉はすぐに病院へと移された。雲雀は知らせを聞き走る。
彼を救いたかった。 失うのが怖かったのに、雲雀は、綱吉の血にまみれた姿を見て動けなくなった。
彼を救うのは自分だ。だけど、彼は、目の前に倒れている。 雲雀は発狂しそうになった。そして雲雀は緊急オペからはずされた。お前には今は無理だと、動けないのなら邪魔だと、院長のディーノは言った。
雲雀は願う。もう一度あの子の笑った顔が見たいと。しかし、それは叶うことができなかった。綱吉は、死んだ。 すでに、病院に着くときから虫の息だった綱吉は、一度も意識を浮上することもなく亡くなった。 雲雀は死んだ綱吉に必死に心臓マッサージをしたが、意味もなく、終わった。
雲雀は荒れた。 雲雀は、手術をすることができなくなった。もう、この綱吉がまだいたときの雰囲気の残る、病院にはいられなかった。
雲雀は家に閉じこもるようになった。葬式には行けなかった。
彼の最後を見たくなかった。けれど毎日のように、綱吉の死んだ場所に通った。
そのときに、雲雀は変な男と出会った。
綱吉によく似た雰囲気を持つ、小さな男だった。綱吉の友だという、しつこい男だった。






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