綱吉はある事故によって、視力と声を失い、生きる気力を無くしてしまった。 事故では両親をなくし、天涯孤独の身となった綱吉。 そんななかで出会った、雲雀と綱吉にはいつのまにか信頼関係が生まれていた。

何とか生きる気力を雲雀によって持ち直した綱吉は、病院の屋上で雲雀が一人で何かをやっている事に気づくのである 。
「ヒバリさん…?」
あ、音が聞こえる。ハーモニカの音色だ。彼がハーモニカを吹いていたのだ。 雲雀は綱吉にこれは歩けたご褒美だといい、ハーモニカを綱吉に授け、綱吉は教わることになった。 雲雀は1番好きな曲は校歌だといったが綱吉には難しいだろうと、「星に願いを」という曲を教えてくれた。 二番目に好きな曲なのだという。
最初はまったく吹けなかった綱吉だが、雲雀に聞かせるためにと頑張って練習する。綱吉のハーモニカは少しずつ上達した。 そして、彼の体調の方も良くなって、出歩けることもできるようになった。声は精神的なショックなのだというのだからいつかは出るようになるのだろう。
だけど目はもう一生治らない。知っている。それでも、外に出てみたくて、世界を知りたくて、自分の世界だった世界を見たくて、一度だけ抜け出した。 その日はちょうど、雲雀は病院の院長に呼ばれていた。

雲雀は名医である。国で名の知れた名医だが、雲雀は綱吉の目を直してやることができなかった。 この国では綱吉の手術を行うための施設がないし、技術がそこまで進歩していないのだ。
それに、綱吉には金もない。 雲雀には多くの財産を持っているが、まだ、綱吉に告げることを迷っていた。外国に行き、手術をしよう。リスクはあるが、日本で行うよりも格段にリスクは下がる。 しかし、失敗をしてしまえば、綱吉の目には一生光は見えない。いまは、まだ少しだけみえているのだ。ほんのすこし、色だけは判別ができるくらいに。 雲雀は迷っていた。院長は、そんな雲雀の様子を見かね、そして、こんな小さな病院にくすぶっている雲雀という存在を広い世界に行くように告げた。
綱吉はなんて答えるだろう。今日は、彼は出かけている。

彼の居場所は病院にしかないのだ。家族を失い、身よりの者も、ある理由でいなかった。
そして、雲雀のそばにいることのできる、唯一の存在であった。 雲雀には綱吉が必要だった。綱吉にも雲雀が必要だった。

そんなときだった。近くで救急車のサイレンが鳴り響いた。






星に願いを