手術を終えた雲雀は綱吉の姿を無意識に探していた。もう帰ってしまったのかもしれない。 あれから数時間が経ち、山本も無事だ。あれとはそういえば長い付き合いだったか。 一言二言と話すだけのような人間だったが、マンションでの隣人だったことは覚えている。 それに中学の時から見たことがある顔だった。よくは知らないが、むこうはこちらのことを知っているのだろう。 「雲雀」とよんでいたから。
そういえば、バジルという奴と話していた。仲よさげだったような気がする。 思い出すと胸がむかむかした。
雲雀はバジルという男を探している。彼には言いたいことがあった。興味がわいたのだ。 顔は全く違うのに、どこか綱吉に似ていた。綱吉とつながりがあるやつなのに、僕は知らなかった。何故だ。
綱吉のことはすべて知っていると思っていた。それは間違いだったのだろうか。
確かめたいことがあった。 言いたいこともたくさんあった。けれど見つからない。
諦めかけて帰ろうとしたそのときだった。音が、する。 よく聞けば「星に願いを」だ。ハーモニカの澄んだ音色。雲雀の二番目に好きだと綱吉に教えた曲だ。
綱吉…?雲雀は呟く。
綱吉が呼んでいる気がした。雲雀は集中して、音のする方向を探した。 音は上から聞こえる。
…屋上だ。
雲雀は走りだした。
綱吉がいるかもしれない。 彼が雲雀の元へ現われてくれたのかもしれない。
バジルの存在を忘れ、雲雀は全速力で走った。




星に願いを