「健康を祈ります」
それでは、また。
いつか、どこかで。

「健康って、何だそりゃ」

ぷはっと息を吐き出して笑うのはルークと呼ばれる朱の色をもつ青年だ。

「何がおかしいですか」
「ん? ジェイドが握手を求めてきたりする所だとか、俺を友人と思ってたところとか、鬼畜なところとか、今の言葉とか?」
「……余計なものまで混ざっているような気がするのですが」
「気のせーだろ」

だってこんなシリアスな空気でいっぱいなのにジェイドがおかしなことを言ってくるからいけないんだ。

「あなたは私たちに約束をしたでしょう」

死は青年に近づいてくる。すぐそこまで、もう来ている。
それをジェイドは知っていながら、無理を言う。

「うん、でもわかってるだろ?」
「約束を破るつもりですか」

これでは駄々をこねる子供のようだ。わかっている。
そんなことは、知っている。
可能性が欠片もないことなんて、己自身でよくわかっていることではないか。

「破るつもりは……」
「わかっています」
「だったら言うなよ…」

青年は顔を俯かせる。ジェイドはその俯いて低くなった頭をポンッと軽く叩いた。

「あなたは帰りたいんでしょう」
「そりゃ、帰って来たいよ! でも」
「だったら、そんなに卑屈に考えないことですね」
「はぁ?」
「生きたい生きたいと思っていれば、もしかしたら、生きれるかもしれません」

唖然とルークはジェイドを見つめる。なに言ってんだこいつ、とその目は語っていた。

「……ジェイドがそんなことを言うなんて……」
「天変地異の前触れだって?……私だって、もしかしたらと考えることはありますよ」
「いや、お前はないだろ」
「ばれましたか」
「おい」

青年が突っ込めば黙ったかと思うと、ジェイドはまた口を開いた。

「……あなたには、沢山のことを教わりました」
「急に、何だよ、そんな。つーか教わったって…」
「あなたのいない世界なんて、私は欲しくありません」
「……こ、壊す気かっ!?」
「それもいいかもしれませんねぇ」
「駄目だ駄目だっ!」
「ともかく、そういうことです」
「いや、わかんねーよ!!」

青年はジェイドをにらむ。ジェイドはそんな青年を見て笑った。

「ははは」
「ジェイドっ!」
「あなたが帰ってくるのを待っているということですよ」
「………」
「ですからね、」

健康を祈りますとは、そういうことです。

「またいつか、お会いしましょうね」
(「さよなら」ではない)
そしてそのときまでお元気で。
(たとえそれが遠い未来、私が記憶を失い、新しく生まれ変わったとしても)
(あなたにまた会える日まで、私は)














(わけもなくすきbyafaik)
もしかしたらあったかもしれない、最後の会話。
こいびとみまんゆうじんいじょう。
2009.03.29→2010.8.28 chisa