イオンは最後まで俺を優しいといった。
だけど彼の方がずっとずっと、優しかった。
「なぁ、イオン。幸せって……なんだと思う?」
俺が彼にそう聞いた時、優しい彼は目を丸くした後、視線を逸らせる様に顔を伏せた。
イオンがさらわれて、俺達はザレッホ火山へと急いだ。
そこで発覚した少女の罪には全く触れず、優しい彼を助ける為に走り続けた。
間に合わないとわかっていながらも、心の中の何処かでそれを否定する自分。
無事でいてくれ(もう彼が消えるのはみたくない)
早く、早く助けなければ(……もしかしたら、もう)
彼のやわらかな優しい声が朗々と聞こえると、俺は仲間を置いて、更に急いだ。
彼らの呼び止どめる声など、気にも止めなかった。
「イオンっっ!!」
声は響き渡る。彼はふらりとよろめきながらもこちらを見て、驚いた顔をした。
それでも、彼は預言を詠む事をやめない。俺が知っている預言を、苦しみながらもイオンは詠んでいく。
止めるんだ。止めてくれ。……死なないでくれ!!
心の声は表に溢れ、彼が死ぬよりは、とルークは紡ぎ出す。
重なった二人の預言に、追い着いた仲間は驚き、イオンはルークをみながらニコりと微笑した。
ありがとう、と言外に言う彼の言葉はルークだけに聞こえてくるようで。
ルークは歪んだ視界から彼が消えていくのを止められなかった。
抱き締めた先から消えていく感覚に、恐れと絶望を抱きながらも、どこかでほっとしている。
(これで、彼は自由だ)
キラキラと残った彼の軌跡が、ルークを見守っているとでも言うかように、
ルークの周りで最後の輝きを放った。
(……もう、彼は)
誰にも何も責めずに彼は逝ってしまった。だから、今度こそ永遠に会えない。
―――ごめん、ごめんな。……ありがとう、イオン。
仲間達の声が遠くから響いて(…うるさい)ルークは世界に意識を戻したのだった。
なぁ、イオン。幸せってなんだろうな。
壊れてしまったと知った
(どうしてかな、胸が痛いよ)
(死が怖い、生が怖い。全部全部、怖いよ)
08/03/24 chisa