1/傲慢(『この世の大罪を』207βより)

―――人間が1番偉いとは、誰が決めた。
自分勝手で傲慢な彼等には、笑いしか浮かばない。引き止める言葉は、涙が出るくらいに、可笑しかった。 お優しい人間様。自分たちのことしか考えていない、優しい優しい彼等。 身内には甘すぎるお前たちは、種が違うだけで、レプリカというだけで。俺たちを、殺してくれた。
汚い言葉で。汚い手で。彼等は、純白の俺たちを赤で染めていく。
まだ何も知らぬ、同胞よ。先に逝った同胞よ。お前たちは、知っていたか。 この世界に、俺等のいる場所は無いそうだ。俺等が俺等として生きていける場所は、ない。 俺も、知らないままでいたら、人間をずっと愛していただろうか。 罵られても、殺されても、彼等のことを何も知らないままでいれたなら、俺は、彼等と一緒にいただろう。 世界のために死ねと言われ、同胞と一緒に消えようと思った。世界を好きなままで死のうと思った。 だけど、彼等の言葉に、知った風に口をきく、彼等に。言葉でしか引きとめようとしない彼等に、愛想が尽きてしまったのだろう。 それとも、憎悪が、膨らんでしまったのだろうか。心の奥底にあった感情の波が押し寄せて、気づいたら彼等からも世界からも逃げていた。 今頃、人間はどうしているだろう。各国の捜索隊が、俺を探しているのを俺は知っている。 だって、いま目の前に、彼等がいる。 (冷たくなった彼等が俺を、見ているんだ)
世界のどこかでまた誰かの悲鳴が聞こえる。……そんなの知ったことではないけれど。




2008/05/06→2008/06/14 chisa

















2/嫉妬(『この世の大罪を』207βより)


―――まだ、足りないのか。
一度だって、誰かを羨んだことが無い奴はいないだろう。 俺が、全てを羨み、欲したように。誰もが、自分には無いものを求めている。自分には足りないものを求めている。 俺には生まれて来た意味があった。死ぬために生きてきた。誰かの代わりに、生きてきた。 その誰かは、気づきはしないのだろう。気づこうともしないのだろう。俺が、お前のために生き、逝き行く事を。 知らないからと、憎悪し。知らないからと、罵り。知らないからと、壊し。知らないからと、平気で殺す。知らないからと、嫉妬する。 全てを知ってしまえば、壊れてしまうだろう、心。その心を守るために、俺は、何も言えないのだ。 そう、俺の心を守るために。誰かの心を守るために。 羨ましいよ、お前が憎い。世界に愛されたお前は、死ぬことなんて無いだろう。 世界に愛されなかった俺は、殺されてしまうのだろう。 普通の人間のように、人を愛し、人と接し、人を殺す立場でいたかった。
なぁ、俺は、お前よりも幸せだといえるのか。お前の全てを奪ったといえるのか。 お前等を騙したとでも、いえるのか。 なぁ、羨ましいのはどっちだ。嫉妬しているのはどちらの方だと思う。 答えてくれよ、……被験者達。なぁ、返事をしてくれよ。俺は、まだ答えを聞いていない。
なぁ。
(狂ったくるったクルッタ歯車を、誰も止められない)


2008/06/08→2008/06/22 chisa















3/暴食(『この世の大罪を』207βより)


―――運命って、なんだよ。
誰もが恐れる、俺を。誰もが見下す、俺を。 俺の力を望み、俺自身を望まず、強制して、壊して、破壊して、殺していく。 なんて愚かなんだろう。なんて惨めなんだろう。 なんて下等で俗物なんだろう。なんで、俺は悲しいと感じるのだろう。 これが運命(さだめ)、これが必然、これが、因果。 避けられないのならば利用すればいい。壊せないのならば新たに創ればいい。 まだ足りない。こんなんじゃ足りない。全然足りない。痛みも苦しみも、悲しみも。
すべて喰ってやろう。その為に俺はまだ生きているんだろう?生かされているんだろう? 食べて食べて食べて、喰らい尽くしてやる。後がどうなるかなんてしらぬぇな。 どうなったって、どう足掻いたって同じこと。何も残らず、喰らいつくしてやる。
(モウ、オワリダヨ)


2008/06/13→2008/06/22 chisa

















4/色欲(『この世の大罪を』207βより)


―――不味い、な。
情が生まれた。本当に?嘘じゃないのか、そんなもん。上辺だけの顔と、上辺だけの労わり。 "自分"は優しいのだと勘違いして。気づかずにヒトを傷つけて。お前らはそれでどれだけ、殺したんだ。どれだけ、我が身を庇ったんだ。 誰もが心の底で自分を愛し、他人よりも自分を取るように。それは俺が自分を嫌い、憎み、殺してしまいたい程に深く、根付いている。 突然で悪いけど質問だ。人間はどれだけ、自分本位だと思う。どれだけ自分が罪深いのを知らないのだろう。 そうだな、答えは、狂ってるからだよ。俺も、お前等も、最初から。 世界のために死ね?じゃあ、世界はたった一人のニンゲンの手で、助かるのか。生きたいといえ?逝きたいの間違えじゃないのか。 まだ、言いたいことは沢山ある。けど、それは俺が生きていたらにとっておこう。
あぁ、世界は助かっただろう?俺も、お前たちも生きている。じゃあ前の続きだ。……もう、いいよな。 世界は好きだ。……人間も好きだよ、たぶん、まだ。だから、幸せな内に。 だから、情がある内に。壊そう。殺そう。そして、俺も共に逝こう。逃がしてなんかやらない。絶対に逃がさない。 まるで愛しあう男女のように、舞い、踊り、狂うように。愛し、憎悪し、狂うまでになった俺を、止められるは筈がない。 誰も。誰も、俺の心の底を覗く事は出来ないのだから。(狂った愛を、お前等にやるよ。壊された心は、けしてあげやしないけど)






















5/怠惰(『この世の大罪を』207βより)


―――誰が殺るんだよ。
言葉が、態度が、何かがおかしいと、気づいたのは誰が最初か。いや、誰も気づかなかった。誰もが気づきもせず、理解しようともせずに。 世界の中心にいるのだと、思い込み、付け上がって、本当のことなんか、何をすべきかなんて分っちゃいないんだ。 それは俺も、そうなのかもしれないけど。(だって自分の存在意義なんて誰も理解していないだろう?) 近すぎる距離で。だけど何故か遠く感じる距離で、俺を"見守る"彼等は相変わらずで。 己の使命感のみで動き、他者の心は何一つとして気にしようとしない。 俺がどんなに辛くても(そう思うのはいけない事なのかもしれないけれど)、どんなに苦しくても、どんなに悲しくたって、それが当然なのだという。 逆に、彼等は自分たちの仲間が弱音を吐こうとすれば慰め、裏切ろうとしても、何があったとしても、信じ、一生懸命になる。 おかしいとは思わないいのだろうか。自分たちがどれだけ、ヒトを否定しているのかわからないのだろうか。 それでも彼等は、俺が悪いニンゲンだといい、俺を一人悪役に決めつけ、罪を被せ、監視するのだという。 なぁ、おかしいよな?そんなの、おかしい筈だよな。狂ってるんだよな。 俺がおかしいように、誰もがおかしいように。
許されない罪を負わされた俺と、許されない罪から気づかないお前等。 誰も教えないんだろうな。一生の罪を、お前たちは、世界を救うという罪を科せられているなんて。 一生気づかずにいきていくんだろうな。俺と、違って。

2008/06/21→2008/07/19 chisa


















6/強欲(『この世の大罪を』207βより)

―――欲しい、欲しい、欲しい。
人を殺して。沢山の人を殺して。後に残ったのは、その赤い残骸と、悲鳴と、黒い闇。 何も知らずに罪を犯して、それは知らなかったで許されるものではなかったけれど。 知らず知らずの内に、現実逃避して。人は温かくて、優しい生き物だったけれど俺からみれば実に滑稽だった。
欲しいものは欲しいといい、醜く浅ましい争いのなかで人は人を殺しあい、そして、その生きた証は勝者の背に積まれた赤くて黒い山。 誰もがいずれその場所で果てる筈なのに、赤黒いそれで始めから染まっている筈なのに、どうしようもなく、悲しくなるほどに、綺麗だ。 あぁ、だから。俺もその闇が欲しいな。だってそうすれば人になれるんだ。そうすれば、俺ですらも綺麗に見えるのだろう。 俺は強欲なんだ。全てを望んだって構わないだろう?
(全部全部、消えちまえ!)
2008/07/09→2008/08/19




















7/憤怒(『この世の大罪を』207βより)

―――何も知らないんだな。
ありがとう。お前たちのおかげだ。どうもありがとう、本当にありがとう。 俺を壊してくれてありがとう。俺を殺してくれて、ありがとう。 世界には、それが必要なんだろ?所詮ニセモノは、いらないんだろう? どうして、そんな顔すんだよ。今さらだろう?本当に、今さらだ。 どうして、今頃気づくんだ。どうして、お前たちは気づかなかったんだ。 遅い遅い遅すぎる。何もかも、遅い。終わってるんだよ。 うん、ごめんな。でも、遅いんだ。もう俺、限界なんだよ。駄目なんだ、俺はもう、
……あはは、俺、お前たちのこと大嫌いだよ。大嫌いで大嫌いで大嫌いで、大好きだった。 本当に、ありがとう。本当の本当の本当の本当に。嘘じゃないよ。大嫌いだから、大好きなんだ。
だからさ、死 ん で ?
2008/07/19→2008/08/19