6.ひとつひとつ、散りばめて
ぼんやりとした景色が広がる。何も見えない。一面真っ白だ。だけど冷たくない。こんなの、知らない。
ここはどこなんだろうと思うが記憶が曖昧で、わからない。
「ルーク…」
それは、俺の名前? わからない。ここはどこ?俺は、誰?どうしてこんな所にいるの?
―――こっちへ来ては駄目だよ。君の帰る場所はある。
なあ、誰なんだ?
―――大丈夫、分かる日はいつか訪れるから。今は、戻りなさい。君を待っている人がいるよ。
待って! 行かないでくれ! 独りは寂しい。こわい。だから、
―――こわくない。ずっと、君の……る…
聞こえない。聞こえないよ! どこに行ってしまうんだ。
頭の中に流れていたノイズは消えてしまった。ルークと呼ばれた子供は一人取り残されて、蹲る。
「……ク!!」
だれ……?
「ルーク、ルーク! 起きて…起きなさいっ!!」
俺の名前だ……。もう、呼んでくれる人はいない筈なのに…
でも、よく知った人の声だ。もしかして、待っている人のなのだろうか。俺を。
ルークは立ち上がり、声の聞こえる方へと歩いていく。
「ルーク!」
音が木霊する。視界が光を取り戻す。紅い物が目の前にあって驚く。そしてぐるりと一周目を動かして、その紅は目だとやっと理解した。
紅が、ルークを覗き込む。その紅い色を見て思い出す。この人、は。
「ルーク……。意識が戻ったんですね、良かった……」
ジ ェ イ ド
「じぇ……っ!」
「あぁ、動かないで下さい。倒れたときに怪我をしたようですから」
身を起こそうとすれば、ジェイドはルークを支えてそう言った。
「3日間も寝ていたんですよ。ルークは、お寝坊さんですねぇ」
「ばっ…!? へ? 3日って、何。ここどこ?」
「ここは私の家ですよ。貴方の家では少しばかり面倒だったので、こちらに連れて来ちゃいました♪」
「め、面倒って何だよ!! いっ……!」
「ほら、動かない動かない。頭にはたんこぶが出来ているんですからねぇ」
さっきまでは空気が重かったのに、何だか調子が狂う。でも、いつも通りに接してくれる彼が有りがたい。
「本当に、心配したんですよ?」
「ん? 何か言った?」
きょとんとルークは首を傾げる。
「いーえ、何でもありません。それより何か食べたいものとかあります? 欲しいものとか。大体手に入りますから遠慮なく言ってください」
「……何も、いらないよ」
「遠慮せずに」
「……じゃあさ、手を、繋いでいてくれないか? 今だけでいいから」
「……まぁ、いいでしょう。私の手は高いですよー?」
「金とるのっ?!」
「そうですねぇ。ルークが元気になってくれることが1番の報酬ですかね」
ジェイドはそういってルークの手を握り締めたのだった。
そっと優しく、ルークの温もりを確かめるように。
2009/2/13