捏造注意報発令中。ルークにハンディキャップあり。
俺には、伝える術がない。俺には答える術がない。誰もが俺を馬鹿にし、誰もが俺を笑った。
救いも何も、なかった。だから、あなたは。あなたは俺にとっての初めてのひと。優しくて強い、憧れの人。
あなたが俺に向ける感情は何なのかなんて分からない。ただ俺は、あなたを、たとえ偽りだったとしても、好きでいたいと。
眩しい朝、見知らぬ風景に俺は首を傾げるが、その原因をすぐに思い出した。そう突然、屋敷から横でまだ眠っている襲撃者によって俺は連れ出された。
今、屋敷はどうなっているのだろうか。母上は心配してはおられないだろうか。父上は。あの人は、そんなこと気にしないのだろう。
屋敷のみんなは、ガイは。せいせいしたとでも、思っているのだろうか。だって、俺は、死ぬために、生きている。あぁ、もしかしたら、父上は焦っているかもしれない。
犠牲になる、俺がいないのだから。
ふと、窓の外をみれば、畑が広がっている。ここはこんなにものどかで。とてもやさしい。昨日だって、優しい人と出会えた。
『また後でお会いしましょう』
そういってくれた優しい人は、あの人は誰なんだろう。俺のことを知っているようだった。
「…ぅ……」
声が出ないと分っているのに、発声練習は欠かさない。欠かせない、日課である。昨日書いた日記を読みかえしながら、ルークは思う。
あの言葉の意味は、何だったのだろう。まだ、だるい体に顔をしかめながら、窓辺に立った。
―――あの人は。あの人がいる、そう、確かジェイド、さんが。
彼は、こちらを見ていた。じっと見つめていた。そして俺の存在に気づくと、にっこりと笑った。俺に、向かって。
俺はなんだか恥ずかしくなって、身を翻した。それで、おそるおそるもう一度窓からジェイドさんのいた方を覗くと、彼は笑いながら、ゆっくりと口を動かした。
『おはようございます』
こちらに出てこれますか?と聞かれて、俺は頷いた。振り返って眠る彼女を見ると、幸せそうに彼女は眠っていた。
「いきなり呼び出して、すみません」
いいよ、と首を振ると、彼はありがとうございます、といって優しく笑ってくれた。でも、なんか昨日とは違う気がした。
「昨日、あなたの名を聞きましたよね?」
硬い声だった。なぜだか、怖いと思った。
「是非、フルネームを教えていただきたいのですが」
戸惑った。どうして言う必要があるのだろう。関係ないのではないか。
「これは、重要なことです。ルーク、お願いします」
彼の真剣な眼差しに俺は折れた。どうせは言う必要があったんだ。彼の手を握る。不思議そうに、彼は俺を見る。彼の手を開かせ、そこにゆっくりと俺は名を書いた。
"ルーク・フォン・ファブレ"
ジェイドさんはとたんに、膝を折ろうとした。慌てて俺はそれを止める。
『どうしたんだよっ?!』
「公爵家の方とは露知らず、無礼を働いてしまい申し訳ありません」
『ジェイドさん!!』
体に雷が落ちてきたような気がした。そのくらいの衝撃だった。ばれてしまった。ここが、どの国かもわからないのに。
「ルーク様、どうしてこちらにおいでなのか聞いても宜しいでしょうか?」
さっきまでの優しい彼とは違い、軍人のようなその問いかけ。言葉に詰まる俺に、彼は言った。
「あなたの現在おられます此処は、マルクト帝国です。しかしルーク様、悪いようにはしません。あなたはキムラスカの王族。
どうしてこのような場所にいられるのか、どうか、私に教えてください」
ひゅ、と俺は息を呑んだ。
2008/05/31→2008/06/22 chisa