甘い甘い香りが宿屋のキッチンに漂う。甘くて、ほんの少し苦い、チョコレートの香りだ。
日課の鍛錬を終えて戻ってきたルークにその匂いはきついぐらいだった。
「なんか、腹減ったなぁ……」
だがその甘い香りに急激に腹が減ってしまった気がする。
今日は特別なことでもあったのだろうか。それとも彼女たちの気まぐれなのだろうか。
ルークは小首を傾げながらもその甘い香りに誘われて、そのする場所へと近づいていく。
男子立ち入り禁止
そんな張り紙がキッチンの前に張ってあって、ルークは肩を落とした。
「何だよこれ。嫌がらせか?」
不審に思って何度もキッチンの中身を覗こうとするが、色々な障害物のお蔭で見えなくなってる。
仕方ない、ミュウと遊んで気をまぎらわすか。そう思って、背を向けようとしたときだった。
「あ、ルーク! ちょうどいいところに!!」
「は? 何だよアニス?」
「そこから入ってきていいから手伝ってー!」
「え? いいのか? 男子立ち入り禁止って……」
「んもー、そんなことどうでもいいよう。はやく入ってきなよー!」
戸惑うルークを引っ張って、アニスはぐいぐいと奥へと連れて行く。
「あら、ルーク。どうしたの?」
引っ張られてきたルークにティアが声をかけてきた。ルークは戸惑いがちにいう。
「ア、アニスが……てか、何をやってるんだ?」
「? 何ってチョコレート作りだけど……」
「チョコレートなんか何で作るんだ?」
「え、知らな「なーにティアと喋ってんの。そんな暇ルークにはないの! こっちこっち!」
「ま、待てよアニス」
ティアは再び引っ張られていくルークを苦笑して眺めている。
「おいティア、助けろよ!」
「いってらっしゃいルーク。頑張って」
「は? おい、アニス! 引きずるんじゃねー!」
ずるずると引きずられているルークは講義したが、アニスは「ルークが遅いのが悪い!」と言い返す。
「なんなんだよいったい……」
「今日はバレンタインでしょ?」
「ばれんたいんって何だ?」
「…………」
「…………あ、アニス?」
「好きな人にチョコをあげる日だよっ!そのくらい知っててよ、もー!!」
「??そんな日あるのか?」
「そう!詳しくは後で大佐かガイに聞けばいいから。ルークがチョコ持ってっておねだりしたらすぐ教えてくれるよ」
「そうなのか?ジェイドはさすがにそんなことしな…「いいや、してくれるよ。絶対」
「…………」
「…………」
「……そんなことしてる暇じゃなかったんだ!! ルークこれに着替えて!」
「は、これってアニス。女の……」
「いいから、はやくしないと痛い目に「わかったわかった!! 着替えりゃいいんだろ!」
そういってルークは、服を持って着替えにいったのだった。
「こ、これでいいのか?」
無理矢理着させられた服は丈の短いメイド服のようなものだった。
ピンク色のレースやリボンが惜しげもなくあしらわれたもの。誰の趣味はおわかりだろう。髪までもセットされてしまった。
いつもはズボンに隠されて見えないルークの白い足が外気に触れる。その違和感にぶるり、と震えた。
ルークは綺麗にラッピングされたチョコが入った籠を持たされる。
「いい? ルーク、そのチョコを大佐たちに渡してきてね」
「何で俺が……」
「喜ぶから」と即答される。
「男の俺があげたってうれしくねぇだろ」
「それが違うのよねぇ。ね、ティア?」
「(ルーク可愛い……)…え?えぇそうね、ルークだから嬉しいのよ」
「私たちは他にすることがあるし」
「ナタリアは?」
「ナタリアはアッシュのとこに決まってんじゃん」
「そうか……」
しゅん、と項垂れたルーク。そのルークを見てティアは身悶えている。
「(襲われないように)頑張ってね!! 残りは全部ルークのだからー!」
アニスはそんな二人を気にせずに、魔物の巣窟へと送り出したのだった。
コンコンとノックをして許可が出てからガイとジェイドの部屋に入る。
いつものようにガイは音機関をいじり、ジェイドは本を読んでいた。ガイがルークに顔を向ける。
「おー、ル………っっっ! るるるるるルーク!!!!!! なんて格好を……っ!」
「あぁ、これ? アニスに着せられた」
ひらりとスカートの裾を引っ張る。
「すっごく似合ってるぞ!」
ガイは爽やかに笑う。キラリと歯が光った。
「嬉しくねぇけど……はい、これ」
「!!!ありが「ありがとうございます」
ジェイドの長い足がガイの頭を直撃した。
「ジェジェジェイド、ガイが……!!」
「私がなにかしましたか? おやこんな所に害虫が」
ジェイドは片手でガイをつまんでぽいと部屋の外へ放り出した。
「お前、何やってんだよ!!」
「どうしたんですかルーク、そんなに慌てて」
「ガイがガイが……」
「ガイ? 彼がどうしました? 先ほど見たのは害虫でしょう?」
「ちげーって! あれはガイだよ!」
「そんなことより、ルーク。その服どうしたんですか?」
「あぁうん、アニスにやられた。これでチョコ配って来いってさ」
ルークはジェイドの巧みな話術に、ガイのことを頭から忘れさせられた。
「チョコ……あぁ、バレンタインですか。ありがとうございます」
ジェイドはそういって手をルークに差し出す。
「うん、……? その手は何だ?」
「私にチョコくれるんでしょう?」
「お前さっきとったじゃん!」
「貰ってませんよ。ルークからは」
「やっただろ」
「だからルークからは貰ってませんって」
「〜〜〜これでいいんだろっ」
そういってルークはアニスにいわれていたジェイド用のチョコレートを渡した。
「ありがとうございます♪」
ジェイドはルークごとチョコレートを受け取る。ルークは気づいたらジェイドの腕の中にいた。
「ふふふ、ルークがバレンタインプレゼントなんですね。いただきます」
「うわやめろっ!ジェイド!!」
カプリとルークはジェイドに噛みつかれ、おいしくいただかれてしまったのだった。
「でさ、結局バレンタインってなんだ?」
「? アニスたちには聞いたんでしょう?」
「うん。好きな人にチョコを渡す日って」
「……まぁ、間違ってはいませんねぇ」
そういって、ジェイドはルークを抱き締めた。
卓上に置かれた食べかけのチョコレートにはアニスたちからのカードも入っている。
『私たちからののバレンタインどうでした〜? 大佐! ホワイトデー、楽しみにしてるんで、よろしく〜』
『ルークへ。あとで、どうなったか教えてね。大佐はあまりルークを苛めないで下さい』
そのカードの行方は、ルークに知られることなく処分された。
原点はチョコレートじゃない byafaik
夢にしようか迷ったんですが普通にジェイルクに。ナタリアとミュウがでてこなかったです……。
他のキャラも(アニス以外)扱いよくないですね…精進します。
最後力尽きてしまい申し訳ないです。ギャグでもないし甘くもない。何だこれ……すみません。ホワイトデーも書けたらいいなぁ。
ここまで読んでくださりありがとうございました!
09/02/14 chisa