今思うと、一目惚れだったのだろう。
相手の顔を見るだけで気持ちは高ぶるし、何より印象的だったのはその瞳と髪の色だった。
珍しい色だと思った。だから、彼が何者であるのか頭の中の膨大な図書から拾い上げる。
彼は、キムラスカの貴族だろう。それも上位に位置するファブレ公爵家の子息か。
そこまで考えたのは一瞬のことで。ジェイドは目の前で押さえつけられゆれる朱毛に目をやった。
その朱色の、風がそよげば金に輝く細く長い髪に触れたいと思った。
行動も言葉も思考も幼くて、ちっぽけで。
子供自身の弱さに触れ、幼さに呆れ、それでもどこか、可愛らしいと思う己がいて。
二つの自分が己の中に巣食うことを知ったとき、何故か、普段の冷静な自分はもう一つの自分に負けてしまったのだ。
「ルーク」
ジェイドがルークを呼ぶと、ルークは肩をびくりと震わせてジェイドの方へ向く。
「な、なんだよ……」
びくびくと小動物のようにおびえるルークを見て、内心ニヤニヤとしながらも顔には出さない。
手招きするとルークが近づいてきて、にこりと笑ってやった。それにルークはまたおびえた。
「呼んでみただけですよv」
「用事も何もないのに呼ぶな!」
ルークはジェイドにそう突っ込みながらもジェイドのそばからは離れようとはしない。
ジェイドは最初こそルークにそっけない態度をとっていたものの、いつからか変わった。
ルークにちゃんと向き合うようになった。“ルーク”を見るようになった。
そのことに、ルークは無意識に気づいているからこそ、彼はジェイドに口答えをすれど、
無視したり邪険に扱うようなことはしない。
他の仲間にはあまり見せない面をジェイドには見せる。
ガイにだって見せたこともないような嬉しそうな笑みをルークはジェイドにだけ見せるようになった。
いつからだっただろうか。ジェイドはルークとじゃれ合いながら、思考を過去へと飛ばす。
カイツール。そう、カイツールだ。ルークの師匠だというヴァン謡将とルークが再会を果たしたとき。
彼を襲う襲撃者に、固まってしまった己が今思うと情けない。
ヴァンに嬉しそうに駆け寄るルークを見てジェイドの中で何かが壊れた。
ふつふつとわき出る感情を無理やり抑え込んで、ルークとヴァンを離れさせた。
ルークににこりと優しく笑いかけてやって、(ルークは今までと違うジェイドに首をかしげた)ヴァンには殺気をおくってやった。
レプリカ、だということに半ば確信を持ちながらも、それでもルークに嫌悪は感じない。
いや、むしろ好意を感じた。そしてこんなことは初めてだったので、ジェイドは多少混乱しながらも、ルークを促してその場を終わらせた。
師匠師匠師匠、ルークは呪文のように何度も繰り返して、ジェイドはヴァンを殺してやろうかなどと内心思いながらも、ルークに笑って接してやった。
ルークはジェイドがおかしいという。この子供は敏感なのか。ジェイドの変化がわかるらしい。ますますルークに興味がわく。
なぜだと答えを求めるルークに、ジェイドはそんなことはないと言いながらも、穏やかではない。
ルークはそんなジェイドに不審な目をよこしながらもそれ以上聞いては来なかった。
ルーク、ルーク、愛しいルーク。
そのときからジェイドは被験者の人間とは、まったくもって異なる可愛らしい子供にメロメロ(死語)になったのである。
「ジェイド、おいジェイド?」
「あぁすみませんルーク、なんでしたか?」
「だからさ、ヴァン師匠が俺に英雄になれるって言ってきたんだ」
子供は無邪気に告げる。
「なぁ、…俺、なれるのか?」
「英雄に?」
「おう!」
ジェイドはルークに少しずつ知識を与えた。今では彼はジェイドのことを一番に信用しているようである。
「そうですねぇ、英雄とはどうしたらなれると思いますか?」
ジェイドはルークに聞く。そしてルークはジェイドに答えた。
「師匠は俺がアクゼリュスにいって超振動?ってやつをつかったら英雄になれるって言ったぜ」
「あとは何か言っていましたか?ヴァン謡将は」
「あー、ダアトに来ないかって」
髭の野郎。次に会った時には殺してくれる。
ルークに詳しく話を聞くと、でてくる矛盾の多さに呆れながらもジェイドはルークに向かって言った。
「ヴァン謡将のところよりも、マルクトに来ませんか?ルークだったら歓迎しますよ」
ルークは目を丸くして驚いたあと、嬉しそうに頷いた。
「行ってもいいのか?!俺、行ってみたい!」
そして、ジェイドはルークのお持ち帰りに成功したのであった。
ちなみに、アクゼリュスはキムラスカの許可をもらいマルクト兵を向かわせてさっさと住民を避難させ、
崩落は彼らがアクゼリュスの民が避難した場所に慰問に来ている間に、痺れを切らしたヴァンが譜業を使い崩落させた。
そしてマルクトとキムラスカの両国は表向き和平が成立し、ルークをマルクトに迎えたジェイドは幸せに暮らしたのであった。
完。
<軍人の恋物語で10題 04:公私混同 追憶の苑様>
みたいな←殴
無理やり終わらせたのがみえみえですね。文章がいつもよりさらにまとまりがなくなってきた気がします。
最近、本を読んでいないからかな…。
2009/06/14→2011/02/25 chisa