「ルーク」

聞いてほしいことがあるのです。と最後の夜に、彼は告げた。
珍しいくらいに真剣で、眼鏡の奥から見える赤い双眸は、いつにもまして色濃く見えた。

「な、なんだよ?」
「……好き、です」

あなたの、生きる理由になるのなら、私は何度でも言いましょう。

そう、言った。

知っていた。彼の気持ち。
彼の声はいつも優しかった。
彼の眼は、ずっと俺に向いていた。

嬉しかった。くすぐったかった。幸せだった。
(痛かった。悲しかった。つらかった。)

「あなたは気づいていましたね、ルーク」
「うん…」
「返事を、聞いているわけではありません」

良い返事でも、悪い返事でも、私は聞きたくありません。今は。

「……ごめん」
「何がです?私は、答えを聞いてはいませんよ。返事は、あなたが帰ってきたときに聞きます」
「……そう、か」
「あなたの意見は聞きません。私はあなたが好きですよルーク。だからこそ、帰って来て、笑ってほしい。
私のそばにいてほしい」
「ジェイドは…子供みたいだな」

聞きたくないと、駄々をこねる子供のようだ。

「あなたの方が子供です……が、そうですね、大人げないのかもしれません」

苦々しく笑うジェイドに、ルークは腕を掴まれた。
ぎりぎりと、痛いくらいに、骨がきしむくらいの力がこもる。

「っ!」
「…すみません、私はそれでも失いたくはないのです」

辛そうな表情に、ルークは胸が張り裂けそうになった。
ドクンドクンと早鐘のように警戒音のなる心臓。

「ルーク、好きです。…愛しています」

もうだめだ、と思った。彼にとらわれたのだ。
罠にはまってしまった。だけど。

「ごめんな、ジェイド」(答えてあげられなくて)
「……あなたは、何も言わなくていいのです」
「…俺さ、もっと生きたかった。お前と一緒に、生きていたかった。
みんなと旅をして、いろんな事を知って、笑って、辛いこともあったけど、
楽しいことも、嬉しいこともたくさんあって…、俺は、幸せだったといえるから」

胸を張って言える。俺は、幸せだったのだ。
生きた年月なんて関係なかった。今、俺は幸せなのだ。(本当は、言ってあげたかった)

「…それ以上は何も言わないことです。帰ったら何時間でも、何でも、聞いて差し上げますよ」

彼の気持ちが痛い。
愛されることを知った。…人を愛すことを知った。だからこそわかる、その気持ち。
絶望的な、確率。奇跡が起こらない限りは生きることはできない。
でも、何度も奇跡は起こらない。一度すでに、おこってしまったのだから。
だから、何かを残してやることもできない。
…愛を、告げることさえ、もうない。

「……うん、わかった」
「…今日はもう、休みましょうか」

ジェイドはそういって、背を向ける。

「……ルーク?」

棒のように立ったままのルークに、ジェイドは声をかけた。

……なぁ、ジェイド。
これだけでも言わせてくれよ。最後だからさ。

「ありがとう…な」
(さよなら、大好きでした)

俺は、一番言いたくなかった言葉を、一番言いたかった言葉に込めた。
だけど、伝わってしまったらしい。

気づけば、目の前は青で染まっていて、ジェイドの腕の中に包まれている事を知った。






聞かなければ良かったね、知らん振りしか出来ないのなら
(ごめん。こんなことしかいえない)(だけどほんとうは、)















(どうか聞いて下さいbyafaik)
2010/03/16 chisa