「なあジェイド。俺が戻って来れたらお前に言いたいことがあるんだ」
彼は唐突に話だした。
「では、私も貴方が戻ってきたらにしましょうか」
「何をだ?」
「秘密ですよ。貴方が帰ってきたときに教えてあげますから」
「ずりぃぞそんなの」
「貴方だって」
彼は、帰って来ない。もう一人は無事に帰ってきたのに。彼はまだ、私の所に現れない。
―――遅いんですよ。あの子供は。約束は守るといったはずでしょうに。
守れない約束は約束ではない。絶対に帰ってくといったから、私は伝えなかったのに。
彼が居なくてもかわらずに月日は過ぎるけれど、それでも彼が居ないだけで心にぽっかりと穴が開いているような気がする。
他人には変わった、人間らしくなったとは言われたが、私はあの時のままだ。それを分かっているからなのか、誰もそれ以上は言わないのだ。
そういえばと、ふと思い出す。あの子が残したものの存在が手元にあったことに。
仲間から私にこそ必要だと渡されたもの。
あの子が毎日書いて、大事に持ち歩いていた、大切な日記。あの子の、記憶。
それには今までの旅の出来事や、彼の葛藤と苦悩が文字で綴られていた。
懐かしいと思いながらも、ジェイドは読み進めていく。
パラパラとページを捲る音だけが響いている。
そして、最後のページという所でジェイドの手は止まった。
なぁ、ジェイドのことだから、この日記を読んでいるだろう?(えぇ当たりですよルーク)
読むな、なんていってないからいいけどさ。そうだ、ここに書いておこうか。
そうしたら、ジェイドはどう思ってくれるんだろうな。馬鹿だなんて笑う?(私が?何を思うというのですか?)
震える手でページをめくる。
―――もし戻ってきたら、言いたいことがあるんだ。
こんな日記で伝えるんじゃなくて、ちゃんと言葉で。
でも多分いえないだろうから、ここに書くよ。
ジェイドが好きだ。…なんてこうやって書くのは何か恥ずかしいな。
お前のことだから、俺の気持ちなんて気づいていたかもしれない。
なんかなさけねぇな、俺。本当はちゃんと言いたかったけど、こんな所でごめん。
でも俺、諦めてねぇから。ちゃんと、帰ってから言うから。
待ってろよな。あ、いや、結婚するなとはいってねぇぞ。俺はただお前に伝えたいだけだから。
俺の我侭だから。つくづく向いてないよな俺がこんなこと書くなんて。
うん、忘れたいのなら忘れていいよ、いや忘れて欲しい。
…愛してる、ジェイド。
ルーク
溜息を吐く。馬鹿な子供だ。いったい誰に似たのか。
自分のことを棚にあげて子供を罵る。だが。
「…いつまで待たせるつもりなんですかねぇ。まったくあの子供は、年寄りに心配をさせて」
呆れますよと言いながらも、その表情は晴れやかであった。
あぁ、あなたが居ないだけでこんなにも弱くなるなんて。
(忘れてなんてやるものですか)(早く帰ってきてください、さもないと私から貴方に会いに行ってしまいますよ)
最後の()の意訳。早く帰ってきやがれ。さもないと死んでやるぞ。(にっこり)
(どうか聞いて下さいbyafaik)
2008/11/3→2009/02/22 chisa