ごめんなさい、師匠。役立たずのレプリカでごめんなさい。
みんな、ごめんなさい。俺が全部悪いんだ。全部全部悪いんだ。
アクゼリュスの人を死なせてしまってごめんなさい。
居場所を奪ってごめんなさい。ずっと騙していてごめんなさい。
…信じられなくてごめんなさい。
急に世界が、真っ暗になって。息苦しくなって。
体中が音を立てて、壊れていくのが分かった。
あぁ。俺は、死ぬんだ。(うれしい。これで、皆が嫌いな俺はこの世からいなくなるんだ)
(だって、おれはひつようとされてない)(にせものなんだ)
けど、そのとき聞こえた人の声は、とても必死に俺に呼びかけていた。

「ルークっ!ルーク、ルーク、ルークっ!!!」

壊れたように、その人は何度も俺の名を呼んだ。
いや、俺が奪った名前を。俺の名前じゃないとその人に伝えたかったが、
その力さえもなく俺は、死を遂げた。


―――そのはずだった。



「ルーク、髪を切りましょうか?」
「えー、いいよ。めんどくさいし」
「この長さだと、偶に邪魔になってしまうでしょう?それに、短髪も貴方によく似合うと思いますよ」

彼は言った。彼は俺の長い髪を手ですいて、優しげに微笑む。以前とは違う優しい彼。
俺がアクゼリュスを崩壊させたあと、ユリアシティに行き、俺はそこで死んだ筈だった。
意識を取り戻すまでは。死んだと思った。楽になれたと思った。
目の前の、こいつが俺を連れ去り、俺を好きだというまでは。

彼は、とても優しかった。軟禁紛いにどこかわからない屋敷に俺を連れ去った後、彼は俺の髪を切りたいのだといった。
俺は最初は嫌がったけど、彼の懇願に渋々頷いた。今では、首筋辺りまでに短くなってしまった髪。
なんだか生まれ変わった気分だと彼に言ったら、彼は嬉しそうな、悲しそうな顔をした。
ここに来て沢山勉強をした。知らないことが沢山あったけれど、わからないことは彼に聞けば、とても詳しく教えてくれた。
今まで見てきた彼を思えば別人だった。だけど、彼は、彼なんだと思う。
他の誰でもない。彼は、俺を俺としてみてくれた。以前のあの人のように、だけど違った優しさで、俺を愛してくれた。
俺は、愛がどんなものか分からなかったけど、彼の俺に対する情は愛なのだと教えてもらった。

あなたがだいじなんです。あなたをきずつけたくないんです。あなたをあいしているんです。

言葉を、俺にくれた。昔のような、自由でいてとても不自由な環境だったけれど、俺は彼がいればいいとすら思った。
彼はよく出かけていった。俺はさびしかったけど、彼はいつもお土産をくれた。そして、彼の軍服には、血が沢山ついていた。

「ルーク、ただいま帰りました」

彼は血の臭いを俺に語らせなかった。彼は、いつも俺に笑ってくれた。
彼は俺に言い聞かせた。

「貴方を妨げるものは、全て消してしまいましょう。貴方は幸せになるんですよ」






今どこにいるんだろう。彼はどこかへまたいってしまった。寂しい、けれど我慢する。
彼は俺の為に何かをしてくれるんだ。

「ルーク、帰りましたよー」
「!お帰り、ジェイド!」

彼はいつものように血で濡れていた。でもこの日はとても嬉しそうだった。

「?何かあったか? いつもと違うぞ?」

彼はとても嬉しそうに微笑んだ。とても綺麗だった。俺の心臓がドクンと音を立てた。

「よく気づきました、いい子ですね。はい、とてもいいことがあったんですよ。聞いてくださいますか?」
「うん!」
「全部ぜーんぶ、消してきました。もう、あなたが悲しむことは二度とないのですよ」

晴れやかに、笑った。俺は、彼の言葉の意味をよく理解出来なかったけれど。
嬉しそうに笑う彼に俺も笑った。笑う彼がどうしようもなく愛しかった。
まだ俺は彼にそれを言っていないことに気がついて。

「俺、ジェイドが好きだよ」

そういったら、彼はにっこりと笑って。

「はい、私も貴方が大好きですよ」

その瞳の濁った色に気づかない振りをして、俺はジェイドに抱きついた。
















壊れた(狂った)ジェイドさんとルークの話でルーク視点でおおくりしました。ルークはどちらかというと短髪より。
壊れたジェイドさんは、一応、逆行した人です。皆がルークを責めた後ですけど。
ルークが壊れてしまいそうになるのに気づいたジェイドさんが、ルークを連れ去ってしまいます。うーん、ナム孤島あたりでしょうか。
連れ去った後、ルークはひたすら死にたいといいますが、ジェイドさんは許しません。なぜなら愛しているからです。
ルークもそれに気づいて、どんどん距離が近づいていくんですね。まあ、ジェイドさんしかいませんし。
ルークの世界はジェイドさんだけになって、ジェイドさんはだけどルークを壊そうとした世界が許せなくて。
そしてこれは復讐になるのでしょうか?でもそんなジェイドを含めて好きになったルークでした。
突発なのであんまり設定とか考えてません。矛盾点があってもスルーしてください(笑
2008/08/01