死ぬことはとてもとても恐いです。 生きることはとてもとても辛いです。

けれども俺は求めてしまいました。
幸せを求めてしまいました。
彼の幸せを願いました。

死ぬことはとてもとても幸せでした。
生きることも、とてもとても幸せでした。

それは、彼のお蔭でした。
「死が理解できないのは、本当なのか?」
「えぇ、そうです。私には、理解できません」
唐突に聞けば、彼はすぐにこちらに答えを返してくる。

本を読んでいたはずなのに、と思うが、彼の本の進み具合はいつもより少しだけスピードが落ちていたから、こちらに意識を向けていたんだろう。まぁそうか。俺はずっと彼を見てたんだから。彼が気づかないわけがない。
「死ってさ、理解できるもんなのか?」
「そうですね。皆さんは理解できているんでしょう? もちろんあなたも」
「そうだな、わかる…ような気がする」

わかるような気がするだけだ。俺だって経験してない。でも近い所まではいった。


「……結局死は亡くなった人にしかわからないような気がするんだ。一度死に掛けた俺が言うようなもんじゃないけどさ」 「まぁ、本当の所はそうでしょうけどね」

そう、だから俺たちに出来るのは想像だけ。死んだ人間がどうなるかなんてわからないから。

「死って、こわいよな」
「えぇ、怖いです」
「悲しいよな」
「そうかもしれませんね」
「でも、少しだけ、嬉しいような気もする」
小さく笑うと、不思議そうに彼は俺を見つめた。

「何故ですか?」
「まぁ、ある時限定だけどさ」
「ほう、ある時とは?」
ずれてもいないのに眼鏡の位置を直して、彼は問う。

「例えば、大好きな人がそばにいてくれたとき」
「その大好きな人に辛い思いをさせてもですか」
「うん、まぁそうなっちまうけど。あとは、……なんだろうな、幸せなときかな」
「幸せなとき、ですか」
「そうそう、だって不幸になってから死にたいなんて、悲しすぎるだろ?」
「死にたいとは思うかもしれませんよ」
すぐに帰ってくる返答は、少しだけ冷たい。


「うん、そんな気持ちもわかるけど。でも死ぬなら、しあわせすぎてこれ以上ないって時に俺は死にたいと思う」 「そうですか」
「今は、幸せだな」
「死にたいですか」

あぁ、

「……お前は幸せか?」
「あなたが幸せなら、そうなのかもしれません」
「じゃあ、今なら死ねる、かもしれない」

幸せだといってくれるなら。

「私は死にたくありませんよ」
「俺も死は怖いと思うよ」
「ではそんなこと、言わないで下さい」
「俺の幸せは、お前の幸せだよ」
俺は言う。彼は眼鏡を直す。あ、動揺してる。
「……恥ずかしい人ですね。でも、それなら死んではいけませよ」
「なんで?」
「私の幸せは、あなたと在ることなんです」
恥ずかしいのはどっちだよ! 顔が熱いつーのっ!!
「……お前も恥ずかしい奴だな」
にやけてしまいそうな顔を手で覆って、笑った。

「ルーク」
「わかってるって、ジェイド」
お前の幸せは俺の幸せ。だったらこれしかないじゃないか!
「最後まで一緒に、生きような!」

そばで笑いたいんじゃなくそばに居たいんです
(ねえ知ってる?幸せってそばにいるだけであふれてくるんだ)















言ってください嘘でもいいですbyafaik
最初の詩みたいなのはあんまり関係ないような、あるような。 は、恥ずかしいので、余り気にしないで下さい!!

2010/2/16 chisa MEMOから再録(2009.03.21)