「ジェイドってさ、やっぱ物好きだよな」
「どこがです? それを言うならあなたの方だと思いますが」

客用のソファから聞こえたルークの声にジェイドは返事を返した。

「あ、ごめん、ひとりごと」

ルークは慌ててジェイドの方を向きいった。
ジェイドの仕事の邪魔をしたかったわけではないのだ。
ふと思ったことが、口から出ていただけ。
いつも思っていたことだったので、口に出してしまったことと、返事が返ってきたことに驚いていた。

「私の名が聞こてきましたが」

ジェイドは手を休めずにちらりとルークを横目で見る。
その鋭い目にルークは瞬間びくりとしながらも眉をさげて苦笑した。

「おやおや、物好きルークがどうしたんです?」
「それ、お前だって」

ルークはむっとしていう。
ジェイドは手の作業を止めた。

「何故?」
「だってさ、俺がここにいること自体おかしいだろ? 俺は暇だし、邪魔するしかねぇじゃねーか」
「そうですか、暇なら話し相手にくらいなりますよ」
「それじゃお前仕事できねーんじゃねーのか?」
「私ですから」
「おまえなー」

文句を言えばジェイドは当たり前という様に返す。ルークはそんなジェイドに諦めたように笑った。

「それでどうしたんです」

完全にジェイドの意識はこちらに向いているようにルークには見えた。
しかしジェイドの手は動き出して書類の山は少しずつ減っていく。
ルークはすげーと感心しながら手の動きを見ていたらジェイドに呆れたような溜息をつかれた。

「暇ですか」
「…おう」
「正直ですね。少し待っていてください、すぐ終わりますから」

ルークはジェイドの書類の処理をじっと眺めた。
これなら暇つぶしになれる。
今までジェイドの事を考えていたけれど、無心になって見れるじゃないか。
余計な事を言わなくて済む。……さっきのことは後で聞かれるだろうが。

あっという間にジェイドの机はきれいになり、ジェイドは席を立った。
こちら側に来ると思ったら、背を向けて隣の部屋へと歩き出す。

「どこいくんだよ」
「喉渇いたでしょう?」

それもそうだ、と頷いた。ジェイドの偶に入れてくれる紅茶は美味しいから好きだ。
帰ってきたジェイドはティーセットを持ってきていた。そしてジェイドの長い手が紅茶を入れる。
あの手は俺よりも大きい。そこがずるいと思う。好きだとも、思う。

「どうしました」

ぼーっとしていたらしい。ジェイドはルークに言った。
ルークの方には砂糖を一つ、ジェイドのには何も入っていないストレートを。
いつもどおり、変わらないこの風景がたまらなく「好きだ」

「……は、」

好きですか、とジェイドは呟く。まっ白いジェイドの顔が少しだけ赤らんだように見えた。

「ジェイド?」

ルークはこてりと首をかしげる。何がどうなってるのだろう。

「……無意識、ですか」
「何が?」

目の前に置かれた紅茶を飲む。やっぱりおいしい。好きだ。

「で、何が物好きなんです?」
「お前が、だよ」
「あなたでしょう?」
「なんでそうなる!」
「私はあなたに強制してここに居させているわけではありませんよ?」
「いや、お前が……、まぁ、そうだな」

確かに、そうかもしれない。ジェイドが一緒に来ますか?と言ったのにルークはついて来てしまったのだ。

「さて、私が物好きという根拠は?」
「うーん、そういわれるとなぁ、……なんだろう」
「ないのですか? そんな理不尽な。私、悲しくて涙が出てきそうですよ?」

よよよと泣き真似をするジェイドにルークは呆れ顔をした。

「いや、あるにはあるんだけど」
「ええ」
「もしかして興味あんのか?」
「もちろんですとも。あなたから見た私ですよ、興味がわきます。ですが、答えによっては…」
「……な、なんだよ?」
「……それはお楽しみです」
「おい!」
「まぁまぁ、いいから教えなさい」
「……いや、よく俺が側に行ってもお前いつも変わらないから」
「……は?」
「だって、忙しい時でもどんな時でも、俺が呼んだら答えてくれんじゃねーか」

前とは大違いだな、とルークは笑った。

「まぁ、そうですね」

ジェイドは苦々しく返事をした。

「どうしたんだ?」
「もっと違う答えを期待したのですが……」

どうも勘が鈍ったようですね。私が鈍いのか、それとも。
ジェイドは呟く。

「そうなのか?」
「ルークはどうしてだと思います?」
「何が?」
「私があなたがそばに来ることを許しているとするでしょう。それは何故なのか?」
「うーん、……なんでなんだ?」
「鈍いですからねぇ、ルークは。では逆に何故あなたは私の側に近づくのか?」
「鈍いって…ひでぇな。でも…そうだな、ジェイドの側って落ち着くんだ」
「ほう」

他はと目で促されてルークは思考を巡らせる。

「……好きだから、かな」
「……そうですか。それはよかった」
「何が?」
「……私もですよ」
「??」

疑問符を顔じゅうに浮かべてルークはジェイドの顔をうかがう。

「私も好き、ですよ」
「…そうか、両想いだったんだな!」
「そうですね」

ルークはキラキラと表情を輝かせ、嬉しそうに笑った。

「うれしいな、俺」

だって、俺、他人に好きだなんて言われるの初めてだから!
ルークは嬉しそうに笑うが、ジェイドは他人ですか、と小さく言った。
どうやらルークは本当に鈍いらしい。
ルークの中のジェイドはどんな存在なのか。彼の心にジェイドはどの位を占めているのか。
気になるところではあるのだが。

「……いいでしょう」
「何がだ?」

彼にはまだ早いのだ。
ジェイドは心の中で苦笑して、表面上はルークに優しげにほほ笑んだ。他人にはめったに浮かべない柔らかい笑みだ。
そして、

「では、どこまでもお供しますよ、ルーク様?」

―――そして彼を染めてやるのだ。私の色を、彼に植え付けて、離れないように、離さないように。

「……馬鹿やろう」

初めてルークに会った時にように跪き、笑みを浮かべて告げた。
ルークは目を丸くしてから嬉しそうに微笑み、そして苦笑しながらジェイドの肩を軽く叩いた。



手っとり早く心臓を食べてください
(私を欲しいといえばいい。貴方はすでに私のものだから)






















言ってください嘘でもいいですbyafaik
いつの間にか淡々と進む彼らの会話。相思相愛だが、ルークはまだ好きという感情をよくはわかっていない。
ジェイドはそんなルークごと愛す。この会話はどこら辺の軸に入るだろう。
久しぶりなので、またかなり変わってしまった文章の雰囲気ですが、たぶん毎回私の気分で変わってくると思います。
2009/12/22 chisa