「俺は、お前のことが好きだぞ」
彼は私をみてそういった。
(あぁ、これは夢なのだろうか。)
(彼は、何故私にそんなことをいうのだろう)

目の前にいる男にそう告げれば、男はそうですかといってそれ以上何も言わなかった。
(そうですか、と答えるだけで背を向けると、何故か彼の悲しそうな顔が浮かんだ)
(動揺しているのだろうか、この私が?)

彼を見ているだけで苦しくなるのは何故だろう。
見ているだけでは我慢できなくなって、つい話しかけてしまうのは。

この想いを知らない。

苦しくて苦しくて、おかしくなってしまいそうで、怖くて。
知らないから、誰かに聞こうと思っても、なんだか恥ずかしくて。
だから、知らないままでいいとすら思った。
知らなければ、いつか、この気持ちは薄れるだろうと思ったから。

だって、男を見て、なんだか苦しくて、でも幸せで、あったかくなるなんて、変だろ?
何故か俺を慕ってくれる青い小さな聖獣にだけは毎日のように聞いてもらって、答えを探すふりをする。
知らなくてもいいんだ。でも知らなければ後悔するかもしれない。
頭の中でぐるぐると回って、沸騰しそうになるまでになると、プシュウと頭から湯気が漏れる。
疲れ果てるまで考えて、でも答えが見つからないので諦める。寝る、か。

「何なんだろうな、この気持ちって」

俺はベットの上で呟く。今日は一人部屋になったので、周りには人はいない。
聖獣(ペット?)のミュウはいるが。

「ご主人さま、ご主人さま、ミュウはわかったですの!!」
「何だよミュウ、お前わかったのかよ」
「はいですの! 聞きたいですの?ご主人さま」
「き、聞きたくなんかねぇよっ!」

聞いてしまえば何かが終わってしまうような気がして、俺はミュウを投げた。みゅううぅ〜といってとんでいく青い物体にせいせいした気持ちになりながらも、罪悪感も少し。

「ごしゅじんさま、ミュウはわかりましたですのぉぉ〜〜!」
鳴きながらミュウは俺にいう。

「うるせーよ、ミュウ!」
「ぜったい言わないですの!! ご主人さまは、ジェイドさんがすきなんだって、言わないですの!」
「おま、おまえっ?!」
いわないって言ってる先からいってんじゃねーか!? と突っ込めなかった。
「な、なに言ってんだよ! そんなことあるわけねーだろ?」
「絶対そうですの! ……みゅ、みゅ? ご、ご、ごめんんなさいですのぉぉぉぉ!!」
「何が」
「ミュウは言わないっていったですの!言ってしまったですの!!」
「そんなこといいから! 何かの間違いだろミュウ!! 間違いだといってくれ!」
「みゅ?ごめんなさいじゃないですの?よかったですの!」
「だから、」
「ミュウはご主人さまのことが大好きですの! だからわかるですの!
ご主人さまはジェイドさんが好きなんですの! だから、だから、かまって欲しいんですの!
でもでも見ているだけでも幸せな気分になるんですの!」

ミュウと同じですの! とミュウは嬉しそうに言う。

「俺が、ジェイドを……?」
「はい、ですの!」
「そう、なのか?」

わからない。けど、ミュウの言っていることが当たっているような気がして、ならなかった。

「じぇいどが、すき、なのか、俺……」

好き、ってなんだと思った。
母上が俺に向けてくれる愛情のことだろうか。
ガイと俺の間にある友情のようなものだろうか。

「好き、好き、すき……」
「ご主人様?」
「なぁ、ミュウ。俺、ジェイドが好きなんだよな」
「はいですの!」
「ミュウは俺が好きなんだよな?」
「はいですの!」
「うん、そうか。わかった」

少し想いの形が違うような気がするが、ミュウの好きと俺の好きは一緒。
知りたくなかったはずの答えはすとんと心の中に吸収される。

「よかったですの!」
「うん、よかったんだよな!」

答えはわかったのだ。すこしだけまだもやもやしていたけれど、それでも疑問はとけた。


「ジェイド、聞いてくれるか」
「なんですか」
「俺は、お前のことが好きだぞ」
急に俺は言ってみたくなった。どんな顔をするのかとわくわくした。
「……そうですか」
ジェイドはそれだけ言って去っていく。

なんで?
凄く凄く悲しくなった。痛い、苦しい、悲しい。
どうして?
好きって、こんなに辛いものなのだろうか。
……好きってなんだろう。ミュウの好きとは違う気がする。
だけど、わからない。
俺はジェイドが好きなんだろうか。

彼は、振り向いてはくれなかった。









(どうか聞いて下さい byafaik)
ミュウ多めですね、ジェイドさんの出番がないですの! 最初の反転すると多分何かが見えるはず。気にしなくても全然OKです! 続くのか…それは私にもわかりません! (つづいちゃいました。→手が掛かるばかりで、恐らくはあなたを束縛する
2009/03.26 →2010/3/16 chisa