おたふく TSUNA ver.




少年のような幼げな顔をした青年が、広い部屋に置かれたキングサイズの大きなベッドに横たわっている。その両頬は林檎色に染まり、痛々しいほどに腫れ上がっていた。熱が高いのか潤んだ目をしていて、呼吸するのも辛いのだろう。―――その青年の病名はおたふくだった。

「ヒバリさん…あんまり近づかないで…うつっちゃう」

看病をしてくれるのはとっても嬉しい。長い間側にいられるなんて滅多にないことだから。
だけど、うつってしまう。おたふくは大人になったら辛いなんていうことは一般常識だ。
それに、男の人は大人になっておたふくになるのはあんまり宜しくないらしいと聞いたことがあった綱吉はいそいそと看病してくれようとしている恋人に、待ったの声をかける。
そんな綱吉の弱々しい声を無視して、ピタリ、と青年――沢田綱吉の額の上に冷えピタを貼った雲雀は、綱吉の真っ赤な頬をそっと両手で包んで、ふ、と笑った。

「大丈夫だよ、僕は子供のころになったからね。耐性があるのさ」

雲雀の低体温が気持ちいいのか嬉しそうな顔をする綱吉を見つめる。幼少の頃になったといっても、けして絶対に再発しないというわけではないが、そんな事は雲雀にとって関係ないのだ。目の前で可愛い綱吉が、その可愛い頬を真っ赤に染めて、痛々しそうに腫らしているのだから。

「何か欲しいものはあるかい? こんな時だからね、何でも聞いてあげるよ」

潤んだ瞳が誘っているように見えて、なんだかムラっとする。それをおくびにも出さず、努めて優しく聞こえるように言った。なでなでと綱吉の柔らかいフワフワした髪を撫でる。

「……ひばりさぁん!」

(ヒバリさんがそんな嬉しい事を言ってくれるなんて!)
普段はあんまり言葉で言ってくれない人だから、余計に嬉しい。興奮して熱がさらに上がってしまいそう。舌っ足らずになってしまった声は存分に甘えを含んでいた。

「なに。甘えたいの?」

熱上がったかな? 大丈夫? 要望はなんでも聞いてあげるからと、そっと顔を近づけてくる雲雀を見て、ハッと綱吉は何かを思い出したのか泣きそうに顔を歪める。

「ど、どうしたの? どこか痛いのかい?」

綱吉の泣きそうな情けない顔に動揺したのか、綱吉の頬から手を放してしまい、一瞬どもった雲雀は心配そうに言った。

「オレ、……オレっ、このまま使い物にならなくなったらどうしましょう……!!」

綱吉は雲雀の様子をうかがいながらも切羽詰まったように告げた。
(このままオレのが使い物になってしまったら、ヒバリさんは愛想を尽かしてしまうかもしれない!!)
おたふくは成人男性にとって致命的だと知っていた綱吉は、そのおたふくによる男性の致命傷を受ける確率がどれだけ少ないかなんて知らなかった。

「……使い物にならないって、ナニが、かい?」

頭の中でグルグルと綱吉の言葉がまわっていた雲雀は、綱吉の言ったことが少し経って理解できたのか、ぽつり、と思いついたように言った。
内心はにやけた顔をとしている。そういう話題は、通常時の綱吉は全く言ってくれないのだ。

「ヒバリさんイジワルです……」

雲雀がからかっているのがわかったのか、悲しそうに綱吉は言う。
(ヒバリさんのバカ! ほんとに深刻なことなのに!!)

「…大丈夫だよ」

ムスっと顔を背けてしまった綱吉の頬にもう一度両手をやると、ヘにゃりと綱吉の眉が下がった。こっちを向いて、僕を見な、と雲雀は囁くように言う。

「もし君が使い物にならなくなったとしても、僕が君を嫁に貰ってあげることは決定事項だからね」

雲雀がそう言うと、綱吉の真っ赤な頬がさらに赤く、熱を持ったような気がした。











おたふくについての成人男性が〜の記述の説明はヒバリ編であまり詳しくないですがもう少し詳しく説明していますが、調べてからの自分なりの解釈ですので、説明は正しく正確なわけではありません。2011/09/02 chisa