おたふく HIBARI ver.




「……ごめんね、僕たちの子供を作れなくなってしまうかもしれない」

悲しそうに、悔しそうに、眉根をさげて言う雲雀の頬は真っ赤だ。熱があるのだろうか。
しかも片方だけが腫れあがりとても痛々しい。そう、おたふくだ。
おたふくは成人になってからかかると症状が悪化しやすいといわれる。特に男性は成人前にはおたふくになっておかないといけない、もしくは予防接種をしておかなければ危険だといわれているのだ。それもそのはず、おたふくの際に発症する高熱などの症状により、体の機能が低下し、男性の生殖器官は正常な働きをしなくなってしまうのだという。しかしそこまでいくのはかなり重大な症状の場合であり、子供のもととなる精子をつくる場所は2か所あるがその両方が駄目になることはさらに確率が低くなる。いずれにせよ、子供のうちにおたふくになっておいたほうがいいのであるが、これ以上の専門的なところは省略する。
雲雀の場合は両頬ではなく片頬で、子供のころに一度なっていたらしいのだが、免疫が少なくなっていたらしく再び罹ってしまった。大人になってこれとは、情けないとも思ったが、雲雀の症状はあまり痛くはなく、また熱そこまで高いでもないため、まだ軽症といえた。
が、そんな雲雀は看病する綱吉に向って真剣に、シリアスにいうのだ。

「そんな、ヒバリさん…!今はそんな事いいですから…!死なないで!!」
ヒバリの戯言におたふくについて何も知らないツナは純粋に彼を心配した。
(ヒバリさんがこんなことをいうなんて……! よっぽど辛いんだ!)
どうしよう、ヒバリさんがおかしくなっちゃってるのかもしれない。オレがかわってあげたいのに。
(風邪みたいにうつせば治るよね、たぶん。)
ツナはおたふくについて、うつる病気だとは知っていたが、なったことはなく、予防接種にもいったことがなかった。ボンゴレの定期健診でも、さすがにおたふくの免疫があるかどうかなんて調べないのだ。ツナの友人は昔やったのなーやら、俺は予防接種っス。もちろん、かかったことなどありません!などといった数名で、ツナは病気がうつるような環境にいなかった。ランボやフウ太は今回の雲雀の一件で予防接種をすることになった、らしい。

「つなよし…。うん大丈夫。僕は死なないよ」
死ぬような病気じゃないんだから大丈夫だよとはツナのためにも口に出さないでおく。それに雲雀はずっとツナが側にいて看病をしているということで機嫌がいいのだ。熱はあるが、動けなくはない。ただ、治るまでは外に出るなと部屋に監禁されているだけなのだ。だからツナをからかうのは楽しい。そして、あわよくば。
「俺ができることならなんでもしますから……!」
なんてことを言ってもらいたいな。と思ったら、言ってくれた。以心伝心だね。
「ほんとう?じゃあ、そうだね……。まずは、キスしてくれるかい?」
「そんなことでいいんですか?はい、んぅ……」
(これでオレにうつっちゃえばヒバリさんが楽になる!)
そう意気込んで頬を赤く染め、一生懸命にキスしてくれるツナを雲雀は少しだけ鈍い反応をする腕で、抱き締めた。
夢中になっちゃって可愛いな、とすぐ目の前にあるツナの必死な顔を見て、雲雀はにやける。うん、次は何をしてもらおうかな。

「お前ら……つーかヒバリ、お前ツナの生殖機能無くす気か」
どこかで様子を見ていたのか、リボーンの声が聞こえた。声をする方を見れば、テレビ画面にリボーンがでかでかと映っていた。
「リボーン!! お前なんでテレビに映ってんの?!」
ヒバリの腕の中でとろんとしたままでも突っ込みは忘れないツナを無視してリボーンは雲雀に回答を促す。
「そんなことないよ」
そんなことしなくてもこの子は僕のものだからね。ほら、こんなに真っ赤になって可愛らしいこと。
「ねぇ、綱吉?」
「ん……、はぅ。何だかヒバリさん、オレ、熱いです。それにさっきからずっと頬がおかしい気がして」
「ワォ、君もおたふくになっちゃったの」

結局、ツナは雲雀の隣で両頬を腫らし、真っ赤になって寝込むことになったとさ。









ツナver.はまたこんど!2011/08/27 chisa