『なにかのタイミングでたまにしか開かない扉でつながる雲雀と綱吉の世界のお話。』



「あ、こんにちは」
「……やぁ、今日も来たの?」
背後に映る景色は並中の廊下ではなく、彼の部屋だ。
乱雑に物が置かれているが、けして汚くはない。彼の母親が掃除をしてくれているからだろう。
彼がこちらの空間に入ってバタンと扉を閉めると、彼がもう一度そっと扉を開ける。そこにあるのは、ただの変哲もない並中の廊下でしかない。物は試しと繰り返してもただの廊下だ。
「ほんと、不思議ですよねぇ」
「まぁ、そうだね」
 首をかしげどうなってるんだろうなぁ、という彼はもう何十回もこんな現象に出会っているので慣れたもの。最初はとても驚いて、僕におびえて隅っこで縮こまっていたというのに。
「今日も来るだろうと思っていたから、ケーキ用意しておいたよ」
「さっすが雲雀さん…!」
 今日は何かなと応接室の隅に置かれた冷蔵庫の中を漁りながら彼はふんふんと鼻歌を歌う。雲雀さんも食べますか?と振り向いた綱吉はケーキの入った箱を持って、にこにこ嬉しいなと言わんばかりだ。
「そうだね、いただくよ」
 はーい、彼が元気よく返事をしたのを見届けて雲雀は彼とティータイムを楽しむためにと席を立ったのだった。


2013/03/22 ちさ
いただいたネタひとつめ。不思議ヒバツナでなにかネタくださいとねだったところとても素敵なお題をいただけました!






『好きだけど、好きだから触れずにいる2人の、嵌められることのない指輪のお話。』




「もう春なのに、寒いですよね」
「寒いね。でも君、普段も手袋を持ってるでしょ」
 指を擦り合わせて何とか暖をとろうとする綱吉は、そう言えば、これがありましたねぇと苦笑した。
 帰り道、偶然出くわしたといわんばかりに二人同時に驚いて目を見開いて、帰りましょうか、うん、と同じ方向に無言で歩いていく。
 少しでも長く、長く。君の家の距離はゆっくりと近づきながらも、一番遠い距離を歩いて、二人の時間を長くしたいと、気付かれないように努力して。
 でも本当は知っているんだろうね、君も。けれど文句を言わないんだから、同じ思いだって思ってもいいんだろうか。なんて、あぁ僕が僕じゃないみたいだ。
 綱吉は手袋をして、温かいですなんてふにゃふにゃと笑う。
 僕は寒いよと制服のポケットに手を突っ込んでそっと触れたのは、冷たくて、丸い形をした、何かで――――――。



2013/03/22 ちさ
いただいたネタ二つ目。切なめなヒバツナでなにかネタくださいとお願いしたのですが、私のほうがこんな雲雀さんしか書けなくて…(´;ω;`)





『何度しても自分からする時に目をつむっちゃって唇ちょうどよりちょこっとズレたキスになっちゃう綱吉くんのお話。』



 むちゅ。
 音にしたらそんな感じ。
 僕の唇の端っこに綱吉の唇がくっついて、リップ音ともいえない音をたてて離れていく。
 自分からキスするって言ったのに、ギリギリで目をつむっちゃうんだからほんとおバカな子。
 俺、ちゃんとできた?ってくうんて聞いてくる大きな瞳にあとちょっとだったね、残念だって首を横に振ってあげれば、そんなぁって瞳に水分をためて、うるうるしだす。
 そんな綱吉を腕の中に招き入れ、惜しかったから次はできるよと背中を撫でればじゃあもう一回チャンスをくださいと上目遣いだ。
 もう、どうしてこの子はこんなに小動物なんだろう。
「ヒバリさん、もう一回!」
「はい、はい」
 ギリギリまで顔を近づけて、ぷるぷる、もうだめって目をつむる。緊張してるよこの子。いつまでたっても慣れてくれないけどそんなところもかわいくて、がしがし頭を撫でていればじゃましないでってぷんすか怒る。そんな綱吉もまたかわいくてたまんない。
「今日こそ俺が、ヒバリさんの唇を奪うんだ……っ!」
 そんなかわいい目標もいいけれど、いい加減僕は唇にキスが欲しい。みているだけでも満足できるけどやっぱりちょっとは不満である。
「じゃあ、次がラストチャンスね」
 こうやって言わないといつまでたってもできやしないのに雲雀の唇を狙い続けるんだから。
 逃げられないようにしておかないとね、と雲雀は腕の中の綱吉に気づかれないよう綱吉の背中に回した腕に、ぐっと少しだけ力を込めた。


2013/03/22 ちさ
いただいたネタ3つめ。これが一番書きやすかったです(笑)
3作品ともとても楽しくかけました(*´∀`*)もう、さいはさんたらっ!大好きですっ!