じりりりり、けたたましい目覚ましの音に綱吉は目をこすり、欠伸をする。
 まだ眠いけれど、もう起きる時間だ。温い温度はとても心地がいいけれど、ここに居ては何もすることができない。
 目覚ましが鳴っても起きない人にくすりと笑みを零しながら綱吉はベッドから起き上がる。

 この人がこんなにうるさくしても起きないなんて。

 少し離れたところにある目覚まし時計にタッチ。音が止んだ。
 雲雀、否、恭弥さんの方を振り向けば綱吉の体温がなくなったせいで寒いのか身をすくめいている。
 雲雀の腕が、綱吉が側にいるかを確かめるようにもぞもぞと動いた。

「まだ、寝てていいですからね」
 
 おはようの時間まではまだ早い。昨日だって眠るのが遅かったのだからまだ寝かせてあげるべきだろう。
 布団を掛け直して、そっと囁けば、ん、と小さく返事が返ってくる。
 綱吉は、きぃと二人の寝室のドア開け、明るいリビングのカーテンの隙間から覗く朝の暖かな光を浴びた。

「――――さて、今日は何を作ろうかな?」

 顔を洗い、爆発している髪の毛を抑えつけてなんとか見れる形にする。
 新品同様ふわふわの白いタオルで顔を拭き、近くにかけてあった恭弥さんとお揃いで買ったシンプルなエプロンを着た。ついでに手も洗って、キッチンへ移動した。

(あ、そうそう、今夜の夕飯はハンバーグにしよう。ひき肉は忘れないように買ってこなきゃ)

 とんとんとんとんとん、リズムよく刻む音といい匂いが雲雀のいるところまで伝わってきた。
 上手くなったものだ。昔は包丁を持つ手すらぷるぷる震えていたというのに。
 くぁぁと欠伸して、綱吉がベッドから抜けて更に広くなった、キングサイズのベッドの上で大きく伸び。パジャマのまま、雲雀はゆっくりと綱吉の跡をたどる。
 雲雀は洗面台で顔を洗って、鏡で体に綱吉の痕をみつけてふ、と小さく笑む。可愛いものだ。
 綱吉の体にだってどこかしこにも雲雀の痕がある。綱吉からは見られないようなところにばかり付けたので、気づいていないようだけれど。
 気づいていたら叩き起されていただろう。頭に綺麗な橙色の炎を灯し、橙色の瞳で、僕を睨んでぽかぽかと。
 それでも力は入っていないのだ。無意識にセーブしているんだろうなぁ。いつもの調子でばかぁ、と泣きつくのも可愛いものだけれど。
 どちらも可愛いと雲雀は思う。綱吉が可愛いから意地悪したくなるのだ。僕のせいではない。

「おはよう」

 綱吉の背後からそっと抱き締めて朝の挨拶。もちろん状況を確認してだ。以前、気配を消して抱き締めたら包丁を使っていたこともあり手が滑って綱吉が軽く怪我をしてしまった。
 雲雀はこれでも反省しているのである。

「おはようございます、恭弥さん」
「うん」

 綱吉は振り返って、雲雀の頬にちょんって口をくっつける。朝のご挨拶。唇はお預け。
 むぅ、って恭弥さんが拗ねる。可愛い。にこって笑えばさらにきゅうって、雲雀さんの眉根が上がる。
 これ以上拗ねられても綱吉が後々困るだけである。

「……恭弥さん?」
「こっち向きなよ」
「えー、いやです」
「……つなよし」

 仕方がないなぁと苦笑して振り向いた途端、唇におちてきた羽根のように軽い、暖かい感触。
 一瞬で消えてしまった淡い、淡い熱に少し物足りない。もっと欲しいなって、綱吉は思ってしまった。
 
 あぁ、もう!今日は俺の負けだ!

「……もうちょっと、食べていい?」
「だめ、ですよ。朝、なんですからね」
「……君のここはそんなこといってないけど」

 雲雀がニヤリって笑って、綱吉の唇に触れてくる。勝者、雲雀。

(ばか、ばか、ばか。)

「……恭弥さんのばかぁ、」
「うん、僕は綱吉馬鹿だからね」

 ぽかぽか、綱吉のささやかな反抗に、雲雀はそう言って嬉しそうに笑うのだった。















味も分からないのは値段のせいなのか
(それだけじゃないよ。あなたへの愛しさもたっぷりと詰まってるから)


ついったーで仲良くしてくださっているみぁーのさんにリクエストしてもらった、ほのぼの新婚ヒバツナです。
ほのぼの?新婚?な設定はどっかに落っことしてきたような気がしますね……。
2012/11/15(10/21にpixivにてUP) chisa