ハーモニカの音がどこかから聞こえる。綱吉は、その音に誘われ、屋上に上がった。
放課後、みんなは部活をやっている時間。部活をしていない綱吉は、普段は早々に帰っていたが、今日は違った。 クラスの人に頼まれた教室の掃除がやっと終わり、帰るところだったのだ。学校の名は並盛中学。 大なく小なく並がいい〜♪と、どこかで聞いたことのあるようなフレーズの校歌通りの学校だ。 少しおかしいっていうか、風紀委員会っていう怖い組織があるらしいけれど、綱吉にはあまり関係のないことだった。
ハーモニカが奏でる曲は、そう、『星に願いを』。綱吉が子供の時から好きだった曲だ。 いつも聞くと嬉しそうにきゃっきゃと言っていたらしいが、小さい頃なので覚えてはいない。 でも、ずっと好きな曲だ。何でか忘れられない。聞くと不思議と元気になったりする。だけど、どこか苦しくなるのだ。 それがどこなのかは具体的にはわからないのだけど。
綱吉は屋上の扉を開ける。一度も来たことがなかったのに、不思議と足は迷わなかった。 あたりを見渡して、見つけたのは。黒い学ランを羽織った、少年の後姿。どこかで見たことがあるような気がする、と綱吉は思う。 それは、どこだったっけ。 音が止んで綱吉はその少年に向けて拍手をした。素晴らしい演奏を聞かせてもらったのだ。 綱吉が勝手に、だけれど。少年は振り返って、綱吉を見た。
―――視線が交わる。
「ようやく、見つけた」
「ヒバリ、さん」
「会いたかったよ、綱吉」
「……オレもです」
記憶がよみがえる。彼が誰なのか、すぐにわかった。
「ねぇ、約束を覚えているかい?」
僕はもう約束を守ったよ。雲雀は目を細くして、ニヤリと笑う。
「も、もちろんです」
「じゃあ、聞かせて」
綱吉は恥ずかしいです!と言ったが、雲雀は言わないと許してくれそうにない。
「オレは…        」
綱吉の真っ赤に染まった顔をみた雲雀はそう、とそれはそれは嬉しそうに微笑んで言った。
「僕も、だよ」















それから、いろいろあった。骸と名乗る男とも会ったし(胡散臭さは変わらなかったし最初は敵として現れた) リボーンは、綱吉の家庭教師だった。(なぜか赤ちゃん姿だったが綱吉には関係ない)
記憶が残っているのは、綱吉と雲雀だけのようだったが、他のであった人達や、山本とも友人になれた。 いろんな事がたくさんあって、喧嘩をすることもあったし、笑い合うこともあった (雲雀は群れを嫌うので、あまり仲間と仲がいいという感じではないが、綱吉は雲雀らしいなぁと思った)。
綱吉は幸せだ。あのとき掴めなかった幸せ。あのときも幸せだと思ったけれど、雲雀が今はそばに居てくれる。 これ以上の幸福はないと思える。
だから、綱吉は思うのだ。あれは、一種の試練だったのだと。
生まれ変わってからもたくさんの試練にも耐えた。少しずつ成長して、今の俺がいる。 となりには雲雀が。後にはたくさんの支えてくれる仲間たちが。だから。





―――星に願いを、奏でようか。今度は僕と君の演奏で。
(誰かが待っているのを知っていた。オレを探して呼んでいるのを感じていた。だからオレも叫んでいたんだ。)
(ここにいるよって、ずっとずっと。星に願いを、込めて。)






星に願いを END